「鉄仏の製作年代と古伝書「古今鍛冶備考」からみた
　銑押し法と�ﾋ押し法の成立期の検討」

１．諸言
２．古代の製鉄技術
３．調査の方法
３．１　鉄仏の調査

３．２　古伝書「古今鍛冶備考」の調査

製銑技術と製鋼技術の発展経緯に関して記述された代表的な古伝書に、幕末の
刀鍛冶水心子（すいしんし）正秀が著した「剣工秘伝誌」�Dと、同時代の公儀御用人で
刀剣研究家でもある山田吉睦（五代目山田浅右衛門）が著した「古今鍛冶備考」�Eの
二著がある。前者においては、応永（１３９４〜１４２７）を境として、それ以前は
銑生産であり、それ以後鋼生産に転じた事が記されている。しかし、その論拠となる
ところなどについてまでは言及されておらず、資料的価値が乏しい。

これに対してここで取り上げる後者には、「播州宍栗郡千草の白鋼を吹く法」についての
記述があり、「白鋼」（しらはがね）、つまり今日で言う玉鋼が生産されるようになった
経緯について詳細を述べていて大変興味深く、資料的に貴重である。そこで本調査においては、
その内容がどのようなものであるかを知るため、原文の解読を行った。「古今鍛冶備考」は
文政２年（１８１９）頃出版された刀剣書で、文政３年から増補版が刊行されている。
全７巻からなり、その第１巻目に「鉄山略弁」と題し、前述の播州（現在の兵庫県）
宍栗（しそう）郡で行われた製鉄の様子が記されている。
Ｆｉｇ１に原書の写真の１部を示した。なお、原文の解読は著者自身が行った。


４．結果
４．１　鉄仏の調査
４．１．１　製作時代による製作点数の分類
４．１．２　製作年紀による製作点数の分類
４．２　古伝書「古今鍛冶備考」の調査
５．考察

６．結論

本論の題目による調査に限ってみた場合、銑押し法は鎌倉時代には本格的なものとして
成立していた。�ﾋ押し法が開発されたのは室町時代後期、天文頃である。以後両技術は、
近世に至ると一度の操業で量産を可能とする大型炉による、より高度な生産技術へと
進展していったものと考える。

７．補完
文献