当支部会員参加による行事日程

戻り
 古式日本刀鍛錬 一般公開
 刀匠、研師、柄巻師、鞘師、白銀師の実演
 1月2日、3月,4月,6月,11月の第1日曜日
 10月は、関市「刃物まつり期間」に開催



平成25年度「支部活動」日程

支部活動 期   日 会   場
 1回定例研究会・総会  平成25年 5月26日(日)   関市文化会館
 2回定例研究会  平成25年 7月 7日(日)   岐阜市南部コミュニティセンター
 3回定例研究会  平成25年 9月 8日(日)   関市文化会館
 4回定例研究会  平成25年11月 10日(日)   岐阜市南部コミュニティセンター
 5回定例研究会・懇親会  平成26年 1月 19日(日)   ホテルスポーツパルコ
 6回定例研究会  平成26年 3月 30日(日)   岐阜市南部コミュニティセンター

※ 研究会に一般参加・見学を希望される方は事前に、住所・電話番号・氏名・年齢・職業を記してお申込み下さい。

申込先 : 〒500-8258 岐阜市西川手四丁目20番 岐阜市NPO日本美術刀剣保存協会岐阜県支部

        (当日の飛び入り参加、および反社会的組織に関係する方は固くお断りいたします。)

尚、参加会費は 6,000円/1回 を申し受けます。

 ◆平成26330日(日)は生憎の雨天でしたが、本年度最後の研究会に遠く博多支部から米田支部長が
 支部交流としてお越しになり、講師を務めて頂きました。
 また小道具も自慢の所蔵品を4点持参して頂き、眼福にあずかりました。
  
 1号刀 刀銘 兼定(ノサダ)

   身巾やや細身で反りが浅く、焼き出しを見せているところから大坂新刀の札が散見された。
  しかし地鉄は大坂新刀のような精錬さはなく、鎬地は柾掛かっている。また鎬がやや高く、
  刃文は同工が得意とする独特の互の目を焼いており、焼き出しも直刃ではなく起伏の低い互の目を連ねている。

 2号刀 短刀銘 兼信

   身巾広く、寸伸び、反りがある南北朝姿。刃文はやや角張った互の目を連ね、大丸帽子を焼く。
  表裏に真の倶利伽羅龍と蓮の彫り物がある。倶利伽羅龍が相伝備前のそれに極似しており、倫光、政光、
  あるいは大丸帽子から長谷部国重などの札があった。しかしイヤのあと多くが美濃に軌道修正し、直江志津諸工、
  なかでもズバリ兼信と見た札が2名あった。重要刀剣。

 3号刀 太刀 無銘守家

  腰反り深く、踏ん張りがある堂々とした生ぶの鎌倉中期姿。乱れ映りが立ち、刃文は起伏ある互の目に
  蛙子丁子が混じる。一見して備前の優作と解るが、一文字系に札が集中し、長舩正系がこれに次いだ。
  畠田守家の札は2名しか入らなかったが、光忠、長光に見られれば結構でした。
  尚、本科は人吉藩主相良家の伝来で、元来在銘であったものを昭和30年代に偽名と指摘した研究家の言を信じ、
  磨ったところ、結局無銘伝守家で重要刀剣指定されたとのこと。
  刀剣を愛好するものは軽率に茎を弄らないよう自戒されたし。

 4号刀 短刀銘 兼里

   身幅やや広く、浅く反り、ふくらやや枯れた新古境の姿。彫り表裏とも丈比べの二筋樋。
  
鍛えは小板目、地沸付いてよくつみ、精良。刃文は表裏揃った二つ連れ大互の目、 
  
やや荒めの沸が深々とつき、沸足入り冴える
  本作も新刀諸工に札が散ったが、美濃と見た向きもあった。

 5号刀 刀銘 盛吉(平戸左)

    身幅尋常の片手打姿、九州古刀には珍しく地鉄が冴え、刃中深く沸づいた草の乱れを広直刃風に焼く。
   今回一番の難問で、札は全国に散らばったが、近藤支部長の札は1本目で平戸左盛吉と当て、
   皆を呆れさせていました。

 
 【小道具】
 獅子図目貫  銘 政壽華押
 牡丹図縁頭  銘 英昌華押
 雉子図小柄  無銘
 群馬図小柄  無銘
 
 
 ◆平成26年1月19日(日)公益財団法人日本美術刀剣保存協会・本部学芸員田中宏子先生を講師にお招きして
  第5回研究会と新年懇親会を岐阜市内ホテルスポーツパルコで開催しました。

1号刀 重要美術品 太刀 銘 宗吉(古一文字)長さ2尺2寸9分半 反り8分強

 鎬造、庵棟、磨上がっているが元来細身で、元先の幅差が開き、腰反り高く、先に反りあまり加わらず、
鋒に結ぶ平安時代後期から鎌倉時代初期の優美な太刀姿に、地鉄は板目肌に杢目を交え、肌立ちごころに
地沸つき、地景入り、地斑映り立つ。刃文は小乱れに小互の目・小丁子風の刃を交え、足・葉よく入り、
小沸つき、帽子は直ぐに表は焼詰め風、裏は小丸となる。

先の伏さりごころがさほど目立たないため、時代を下げて長光や雲類の札もありましたが、
多くの方が姿や映りの様子、小乱れ調の刃文などから古一文字や古備前に入れておられました。

 

2号刀 短刀 銘 吉光 長さ7寸2分 内反り

 平造、三ツ棟、身幅・重ねとも尋常、内反りで、鎌倉後期の上品な短刀姿を呈し、
地鉄は小板目肌つんだ中に板目や杢目の肌合いが見られ、地沸が微塵につき、地景が細かに入る強い鍛えに
沸映りが立つ。
刃文は細直刃調に小互の目・小のたれを交え、物打ち辺の刃幅を狭め、小沸よくつき、ほつれ・湯走りごころあり
細かな金筋・砂流しかかり、帽子は直ぐに小丸、沸筋かかり、先掃きかける。

本作は粟田口物特有の梨地肌というより、小板目肌がつんではいるものの、中に板目や杢の鍛え肌が見られること
そして帽子に沸筋があることから新籐五國光の札が多くありました。確かに近しいものですが、
腰元の互の目や物打ち辺で刃幅が狭くなる点、金筋・砂流しが細やかな点などから吉光と見ていただければ
幸いです。

 

3号刀 重要刀剣 刀 無銘 長義 長さ2尺3寸3分強 反り4分弱

 鎬造、庵棟、身幅広く、元先の幅差少なく、身幅の割に重ね薄く、反り浅く、大鋒に結ぶ南北朝最盛期の姿に、
地鉄は板目に杢を交え、地沸つき、地景入り、乱れ映り立つ。
刃文は互の目主調に丁子風の刃・尖りごころの刃などを交え、処々腰開きとなり、足・葉入り、匂勝ち小沸つき、
飛焼を見せ、僅かに金筋かかり、帽子は乱れ込み表は尖りごころ、裏は焼き崩れ風となる。

備前鍛冶の中で備前物らしくない作風で知られている長義ですが、本作は映りが立ち、
刃文が匂勝ちとなるなど備前気質を顕現した一作です。特徴的な山形の刃文も見られ、
多くの方が当りを取っておられました。

 

4号刀 重要刀剣 太刀 銘 備州長舩師光 永和二年六月(以下切)長さ二尺四寸一分半 反り六分半 押形

 鎬造、庵棟、身幅広め、元先の幅差が開き、反りやや深く、中鋒に結ぶ姿に、
地鉄は板目に杢・流れ肌を交えて肌立ち、地沸つき、地景入り、乱れ映り立ち、かな色黒みがかる。
刃文は互の目に尖り刃・小のたれ・角ばる刃など多種類の刃が入り混じって不規則に乱れ、処々腰開き風となり、
焼き低く小模様に乱れ、小足・葉入り、小さく飛焼を見せ、匂主調に僅かに小沸つき、細かく金筋・砂流しかかり、
帽子は乱れ込み表は尖り、裏は小丸、先掃きかける。
南北朝期より身幅が細く鋒が小さくなるもの、
室町時代初期よりは身幅広く鋒も大きく、両者間の移行期の姿を顕現しています。
南北朝後期の兼光・長義・元重・大宮・吉井などの各流派を除いたその他の備前物の刀工群は「小反り」と
呼ばれており、個性はあまり目立たず非常に似た作風となります。

 

5号刀 重要刀剣 刀 銘 長幸於摂津國作之 長さ2尺2寸8分 反り5分強

 鎬造、庵棟、身幅尋常、元先の幅差開き、反りが浅く中鋒に結び、地鉄は小板目肌つみ、地沸細かにつき、
地景入り、乱れ映り立つ。刃文は丁子に互の目・蛙子風の丁子・尖り刃・腰の開いた互の目等を交え、
足・葉入り・匂勝ち小沸よくつき、飛焼かかり、砂流しかかり、明るく冴え、帽子は乱れ込み、先尖って返る。

江戸石堂の光平・常光、福岡石堂の札がありました。摂津で活躍した多々良長幸の刀ですが、常の作より
焼きに高低を見せ、匂口がそれほど締まっていないため、諸国の石堂の中で迷われたかと思います。
長幸の作に比べ、江戸石堂は帽子が小丸に返るものが多く見られますし、福岡石堂は地鉄が柾ががり、
先端が尖って逆がかる「烏賊の頭のような」丁子を交えることが特色として挙げられます。
また、長幸には末備前の祐定写しがあり、丁子の作でも腰の開いた互の目が混じることが特徴です。

 
 
 ◆平成25年11月10日(日)講師に株式会社舟山堂稲留社長をお迎えし、第4回定例研究会を岐阜市南部
  コミュニティセンターにおいて開催しました。
       
 
1号刀 短刀銘: 来國次 押形  刃長:八寸五分 反り:五厘 元幅:八分五厘  元重ね:一分四厘

   
    平造り、三つ棟、表裏腰樋に添え樋を丈比べで掻き流す、茎ほどんど生ぶ、先僅かにつまみ浅い栗尻、
    刃方棟方とも小肉鑢は判然とせす、地鉄板目肌、地沸ついて、地景交じり沸映りたち。
    刃文強い沸え出来、匂い口深く明るい、互の目に足よく入り金筋、沸筋砂流し交じる、
    帽子乱れ込み先尖って返り深く焼き下げ棟焼きとなる。
    
    身幅広く重ね薄く僅かに反りのついた平造りの来國次の短刀です。
    地がねはつんだ板目肌でやや肌立ち地沸よくつき、地景の交じったものです。
    刃文は沸出来の直刃に沸足・互の目足が入り、金筋砂流し交じり匂い口明るく冴えています。
    帽子は先小丸に返って返り深く棟焼き状になっています。
    金筋、砂流しが働いていますので、少し相州の札もありました。来國次は相州伝がかかった物も
    ありますので肯けます。
    また、来國光・来國次にはこのように反りのついた物は非常に少ないです。
    

2号刀 刀銘:兼元 押形 刃長:二尺三寸六分 反り:五分六厘 元幅:九分九厘 先幅:七分四厘 重ね:二分弱

    鎬造り、庵棟、身幅重ね頃合い、約四寸摺り上げ、茎尻に二字銘。
    地鉄板目杢目交じり、地沸ついて地景よく入り流れこころに冴える。
    刃文互の目に尖り刃交え三本杉となる刃中金筋、砂流し交じりよく冴える、
    帽子乱れ込み先大丸に返り浅い。

    兼元、孫六の刀です。元は相当長かった物で、おそらく二尺六・七寸あったものと思われます。
    地鉄が綺麗な板目肌で刃寄りに柾目が見え、映りがよくたっています。
    刃文は小沸出来しまってよく冴えていて、尖り刃を交えた三本杉のような刃文になっています。
    帽子はよくある乱れて先大丸に返っています。
    どこから見ても典型的な孫六兼元で、地元の刀ということもあり、参加者全員正解でした。


3号刀 脇差銘:和泉守藤原國貞 押形 刃長:一尺四寸五分 反り:三分五厘 元幅:一寸九厘 重ね:二分三厘

    鎬造り、庵棟、元先の幅差あり反り深く中切先。鍛え、小板目よく詰んできれい。
    刃文、沸出来ののたれ刃に互の目交じり、所々指で掻いたようなところあり、棟焼き入れて焼き下げる。
    帽子、一枚に大丸返り深い。茎、目釘穴上棟より長銘越後守國儔に銘の配置よく似る、
    鑢目大筋違、中心尻栗尻、刃方、棟方薄肉に切鑢に大筋違。

    堀川國広の弟子で和泉守國貞の脇差です。また井上真改の親で親國助とともに大坂新刀のさきがけをなした
    刀工です。
    地鉄は板目に地沸つき地景の混じったきれいな地鉄をしています、刃文は直焼き出しに沸出来の湾れに
    互の目沸足を交え所々指先で掻いたようなところがあります。(これが親國貞の特徴です。)
    匂い口やや沈み加減に深く沸が付いています。姿は重ね厚めに元先の幅差がありやや反りが深く
    時代は慶長新刀と寛文新刀の間で寛永頃の姿をしています。
    この姿を拡大すればちょうど刀の寛永の体配になります。國貞は通常國広の弟子と言われていますが
    実際は越後守國儔に師事したのではないかと思われます。
    國貞の見所は、刃中に指で掻いたようなところと棟焼きがあるところです。
    今回、尾張に見られた方が結構見えました。


4号刀 刀銘:作陽幕下士細川正義造(刻印)押形  安政三丙辰年二月日
    刃長:二尺三寸九分 反り:六分五厘 元幅:一寸一分強 元先:八分六厘 重ね:二分五厘

    鎬造り、庵棟、身幅広く、重ね厚く、腰反り高く、切先延びる、表裏に棒樋を区上で角止め。
    茎生ぶ、掛け出しを化粧鑢とし、以下大筋違、鑢目立つ、ホソ川刻印、刃方棟方とも丸。
    地鉄板目に地沸つき、地景交じり、刃文匂い本位に小沸つき、上向き下向きの重花丁子華やか、足葉盛ん。
    帽子乱れこんで先尖って返る。

    水心子正秀の高弟細川正義の備前伝の作です。
    身幅広く重ねも厚く、切先も延びた豪壮な造り込みをしています、新々刀期はこういう形が流行しますが、
    通常のものより反りがあって形が良いほうです。
    地鉄は板目肌がよくつんで地沸がついています。刃文は丁子で重花丁子と互の目に足を長く
    入れたのを交互に焼いています、いわゆる細川丁子という独特の刃文です。
    新刀の備前伝には映りがほとんどありません。また茎に特徴があり、鑢目が立っていて触ると
    本当に鑢みたいです。
    それと通常ホソ川の刻印があります。新々刀上々作細川正義備前伝の最高傑作です。


5号刀 刀銘:藤原清人作 押形 慶應元年八月日
    刃長:二尺二寸七分 反り:五分二厘 元幅:一寸四厘 元先:八分二厘 重ね:二分九厘

    鎬造り、庵棟、身幅広く、重ね厚く鎬幅狭く、反り頃合い、切先延びる、地鉄柾目肌、地景入り、
    刃文小沸つきの直刃に小足入り、  帽子先小丸に返り、返りを掃き掛ける、茎生ぶ、化粧鑢なく、
    筋違浅く、中心尻先くるっと丸い 茎棟方刃方とも小肉    

    これは幕末山浦清麿の弟子斉藤清人の大和保昌写しの刀です。姿は身幅広く鋒の伸びた新々刀
    の形をしています。
    鎬が狭く重ねを削いだこのつくり込みが清人の特徴です。
    地鉄は非常にきれいな柾目肌に地沸つき地景入り、刃文は小沸出来の直刃にほつれを交えて
    地刃ともに冴えています。 帽子は直ぐに先掃きかけています。

    慶應三年豊前守受領、斉藤昌麿紹介で清麿門、師の没後、三十振り師に代わって作刀す、
    類似工、勝村徳勝、仙台後代国包 三十九歳の作。
    国包、徳勝の札がありました。国包は姿が少し違います。
    徳勝は形がもっと重ねが厚くがっちりしたものになります。斉藤清人の特徴のある大和保昌伝
    快心の一刀であります。


 
 ◆平成25年9月8日 早川三重県支部長を講師にお迎えして定例研究会を関市文化会館で開催しました。
     
 
1号刀 刀 無銘(伝青江) 長さ70cm 反り 2cm

    長巻直し造り、丸棟、身幅やや広く先反りごころあり、鍛えは板目肌に小杢目交じり、乱れ映りが立つ。
    刃文 直仕立てに逆丁子、逆足を交える。
    帽子は焼き詰めとなる。
    南北朝の青江の特徴をよく表しているが、鍛えに澄み肌が無いため、備前観の札が目立ちました。


2号刀 短刀 無銘(伝保昌貞吉) 長さ24.5㎝

    平造り、三つ棟、内反りとなる。
    鍛えは純然たる柾目よく練れてつむ。
    刃文は、直刃に浅く湾れごころ交じり、先焼き幅広く、ほつれ、
    金筋・ 砂流しかかり、帽子は殆ど焼き詰める。


3号刀 刀 表銘:備前國住長舩源兵衛尉祐定作 裏銘:天正二年八月上吉日 長さ 66cm 反り 1.6cm

    鎬造り、庵棟、一寸程磨り上げる。彫 梵字と八幡大菩薩の文字を陰刻する。
    鍛えは板目小板目つみ杢交じり鉄色明るく冴える。
    刃文は、広直刃、小湾れ調に互の目交じり、足・葉よく入り、沸崩れるところがある。
    本作は、直刃調で刃中に葉が点々と連なるところから、清光の札が多くみられました。


4号刀 刀 表銘:奥大和守平朝臣元平  裏銘:寛政六寅春  長さ 72.6cm 反り 1.5cm

    鎬造り、庵棟、長寸でズッシリ重い。
    鍛えは小板目よくつみ無地風でねっとりとし、地沸つく
    刃文は、大互の目乱れ。普段よりは芋蔓が目立たない。
    本作は、砂流しが少なかったことから、出羽大掾國路の札が多く見られました。


5号刀 寸延び短刀 表銘:濃州御勝山麓藤原永貞 裏銘:於 伊勢田丸作之萬延元年九月日 長さ31.5㎝

    平造り、三つ棟鍛え 小板目無地風によく詰む。
    刃文 頭の丸い大互の目、焼き巾広いが、江戸青山打ちほど沸がつかない。
    帽子小丸に、返り刀身中程まで深く焼く。
    田丸打ちは直刃が殆どですが、乱れ刃も稀にある。
    御当地美濃出身の鍛冶であるため、多くの方が永貞と入札されておりましたが、
    支部長の札はズバリ「田丸打ち」とことわっており、廻りを呆れさせていました。


・二見浦図鐔 銘:通天永遣随<花押>

・二見浦図小柄 無銘:後藤程乗

・御木曳図小柄 銘:廉乗作 光晃<花押>

 
 ◆平成25年7月7日(日)公益財団法人日本美術刀剣保存協会の黒滝哲哉学芸員を講師にお招きし、
  平成25年度第2回研究会を岐阜市南部コミュニティセンタ-において開催しました。
 

弊支部は入札鑑定を推奨していますが、決して得点を競うことや成績に喜憂することはなく、
この日も入門者からベテランに至るまで全員、果敢に己の実力を試す光景が見られました。
また茎が開けられた後も熱心に見入り、撤収が告げられてもなお時間を惜しむがごとく
鑑賞を続ける姿は、猛暑が続く昨今以上の熱気でありました。
 


1号刀 刀銘 藤原廣實

    幅広で元幅と先身幅の差が殆どなく、切先が長く伸び、鎬が高い慶長期の特色をよく表しています。
    地鉄に、ざんぐりとした肌が多く見られます。このことから堀川系にいきますが、
    國廣との違いは、物打ち付近の焼き幅が國廣は一段と広くなることがあげられます。
    共通点は、ざんぐり肌の中に杢目が見えることです。國廣の場合は上から下まで
    ざんぐり肌が綺麗に見えますが、廣實は所々途切れています。
    
    注)在銘の廣實は、刀が3振・脇差1振しか発見されていません。
      内、協会に2振収蔵されています。


2号刀 刀銘 (一葉葵紋)主水正藤原正清

    持った時にがっちりしていることが薩摩新刀の特徴です。
    刃文は、湾れに大小の互の目が交じり、変化のあるものが多く、浅く湾れごころがあります。
    また、二重刃がかかるものが多く、互の目交じり、総体的に足が入っています。
    金筋・砂流しが頬りにかかり、太い砂流し、いわゆる芋蔓がかかるものがあり、
    匂口は明るく冴えています。


3号刀 短刀銘 良西 

    本短刀でまず目につくのは、区上で焼刃を大きく燒き落としている
    点です。燒き落としを見せるのは、安綱を始めとする古伯耆か古波平・豊後行平などの九州の古作、
    時折見せる古青江・雲類等があげられます。
    黒みを帯びた地鉄は、ややねっとりとして板目が強く流れて柾がかり、
    大和気質が窺われる点です。併せて匂い口が弱くややうるんでいる点を
    考慮すれば古九州物が考えられます
    左文字をはじめとする筑前刀工の祖とされる良西の在銘は本作以外に経眼されません。
   

4号刀 刀銘 (表)長曽祢興正
       (裏・金象嵌銘)延寶三年卯三月廿八日 貳ッ胴切断 砂河伊兵衛久重 華押

    反りが浅く、元幅と先幅の開きがあって、中切先、このことから寛文新刀と捉えられ、
    同時代の井上真改や助廣なども浮かびます。
    しかし地鉄は鎬に柾が目立つことから大坂新刀は外れ、鎺元にテコ鉄と称される異鉄が露呈している
    点で虎徹や興正が考えられます。
    興正の帽子は、虎徹帽子が少なく、互の目が2つ連なるのが特徴です。
    また虎徹に比べるとばさけた感じがします。
    
    
5号刀 短刀銘 
    
    体配は小ぶりで、重ねも薄く、ごく僅かに反りがつくことから、南北朝の体配であることが分かります。
    小ぶりで南北朝の体配を示すものには、志津兼氏、長義・左文字があげられます。
    通常の左文字は、地鉄は潤いに満ち、刃文は乱れ主調となり、帽子は突き上げて尖り、深く返る作風が
    多い中、本作は穏やかな出来口です。
    切先から物打ちにかけて二重刃が掛かっており、この点から圧倒的に藤四郎吉光観が多く、イヤを得て
    延寿、通りで左一類と行くのがやっとの難問でした。
    穏やかな作風から左文字さながらの作風への変化は暦応二年の短刀と弟子の行弘の観応元年期の短刀から、
    その十年あまりの時期に起きたと考えられています。
 
 

 


◆ 平成25年5月26日は杉浦良幸氏の講師による定例研究会と24年度総会を関市文化会館にて開催しました。

当日の研究刀は・・・

1号刀 刀銘 濃州住兼成作()/天文七年八月日

      【造込】・・鎬造り庵棟尋常。鎬地の肉を落としているため鎬高に見える。
            元先の巾差あまり付かず、反り浅目で中切先、長寸の打刀姿。
            双手打ち最初期の姿。
            
      【地鉄】・・よく鍛えられた杢目鍛え。縦に流れる鍛肌が随所に見られる末関物によくみられる
            地鉄。末関物としては上手の地鉄。鎬地柾
            
      【刃文】・・沸出来、沸粒粗く、上半分の沸特に強く、刃縁全体によく沸る。
            所々に大互の目を焼き沸足よく入り二重刃になる部分などがある変化に富んだ焼刃。
            刃中よく沸、末関物としては迫力ある焼刃。
            
      【帽子】・・直調子に激しく沸付き、先軽く掃き掛け小丸に返る。      


2号刀 刀銘 濃州住兼國作()/天文廿一年二月日 
             於播州三木淡河住人村上源五郎盛定所持也

      【造込】・・鎬造り庵棟普通。身巾広め、鎬高く重ねたっぷりとし、元先の巾差あまり付かず、
            中切先延びごころ頃合い中間反りに先反りが加わった姿。
            片手打ちから双手打ちに移行する時期の打刀姿。
      
      【地鉄】・・地沸よく付き地景よく表れ、鍛え底に黒っぽい地鉄が沈む力強い杢目鍛えの地鉄。
            美濃鍛冶としては珍しい柾がかかる部分が全く
            見られない鍛肌。鎬地樋のため肌不明。
       
      【刃文】・・少しチリのついた感じの明るい小沸出来。刃縁明るい変化の富んだ互の目乱。
            室町時代中期の美濃物に時々見られる焼刃。
            刃中鍛えに絡んだ働きが多く見られ、葉、砂流し盛んに表れる。
            刃中明るく冴える見事な焼刃。
      
      【帽子】・・乱れ込み鍛肌に絡んだ働き盛ん。先掃き掛けごころに浅く返る。      


3号刀 脇指銘 濃州住兼吉()/應永十三年八月日

      【造込】・・鎬造り庵棟普通。身巾細く重ね尋常、鎬筋の高い大和色を残した造込。
            長さ短く強い先反りに腰反りが加わり太刀風の姿に小切先(元来は中切先)
            室町時代初期の太刀の添差しとして使われたであろうと思われる優しい姿の打刀姿。
            
      【地鉄】・・潤いのある小沸よく付き、綾杉風の鍛え流れ柾目近い肌表れ、流れる地景表れる
            潤いのある古雅な地鉄。
            鎺元流れる大肌に絡んだ白気風の映り鮮明に表れる。鎬地平地同様の流れる柾目鍛え。
            
      【刃文】・・小沸出来の細直刃小さく乱。刃縁明るく冴え二重刃、打のけなどの働き見られる。
            切先の焼刃研ぎ減りの為さみしく沸筋が残るのみとなる。
            
      【帽子】・・沸筋のみが残る細直刃。先焼き詰。


4号刀 脇指銘 濃州赤坂住國長()/明應九年二月日

      【造込】・・鎬造・庵棟低め。腰反り気味に先反りが加わり、中切先、手持ちよい片手打ちの打刀姿。
            
      【地鉄】・・細やかな地沸が良く付いた。潤いのある小板目の地鉄。
            室町時代末期の美濃物とは一線を画した地鉄。
            差裏には流れ肌が目立つ。
            
      【刃文】・・小沸出来、や、間延びした小乱の尖り互目。初期の美濃物に良く見る焼刃。
            
      【帽子】・・乱れこんで中丸に浅く返る。


5号刀 脇指銘 濃州住重長()/文明十四年八月日

      【造込】・・鵜首造り、丸棟。鎬地の肉落とし断面形状を菱形とし、長目の寸法に強い先反りが付いた
            室町時代中期の添差し姿。
            
      【地鉄】・・地沸よく付き、良く鍛えられた室町時代の美濃物としては、末物(関物)とは
            一線を画す力強い地鉄。鎺元流れる杢目鍛え肌が表れる。
            
      【刃文】・・刃縁締りごころに粗めの明るい沸付き、焼巾広く物打ち辺りは鎬筋にかかる乱刃。
            変化のある互の目乱れに尖刃交え沸足盛んに入り、刃縁鍛肌に絡んだ砂流し盛んに
            掛り刃中よく沸、明るく冴える迫力のある焼刃。
            
      【帽子】・・本刀同様に乱れ先中丸に短く返る。
 
以上のほか、鑑賞刀として

特別重要刀剣 太刀銘 包永 岡崎藩水野家伝来(徳川家重より拝領)

重要刀剣 刀銘 濃州関住兼綱作/金象嵌截断銘

重要刀剣 刀銘 飛騨守藤原氏房

重要刀剣 脇指銘 相州住廣正/文安五年二月日 奥州黒石藩津軽家伝来

中津川市重要文化財 刀銘 兼元

の五振りが支部から用意されました





平成24年度「支部活動」


平成23年度「支部活動」


平成22年度「支部活動」


平成21年度「支部活動」


平成20年度「支部活動」


平成19年度「支部活動」


平成18年度「支部活動」


平成17年度「支部活動」


平成16年度「支部活動」


平成15年度「支部活動」


平成14年度「支部活動」


平成13年度「支部活動」


平成12年度「支部活動」