令和7年5月24日(土)、富山県支部より山誠二郎氏に講師としてお越しいただき、せきてらすにて第1回定例研究会および総会を開催いたしました。
1号刀 太刀 銘 守家造
畠田守家の特別重要刀剣に指定されている太刀です。
磨り上がってはいますが、元先に幅差があり、腰反りつき、先にも反りが加わる姿から鎌倉時代と見ていただきたいです。
刃文は守家の特徴とされる蛙子丁字が所々に入っており、地鉄を見ますと淡い映りが立ち、板目肌が流れたところがあります。
刃文の物打ちの焼きが低くなるところや小模様な刃文から長舩の長光と見られた方もいましたが、長光とは地鉄の風合いが少し違うかと思います。
また一文字の札もありましたが、一文字であれば物打ちが小模様にならず上から下まで丁字が主体になります。
2号刀 短刀 銘 安吉
左安吉の重要刀剣に指定されている短刀です。
身幅が広く重ねが薄い造り込みで、反りが浅くついているところから時代を南北朝と捉えられます。
地鉄は板目に流れ肌を交えて太い地景が盛んに入るところから相州伝系の鍛冶と推測し、地鉄の整わないところで本流から外して見ていただき、表の僅かに尖った帽子から左に持ってけたらいいのではないかと思います。
ただ安吉であれば通常棒映りが立つのですが本作には見られず、また左一派の特徴である尖った帽子も目立たないため難問でした。
3号刀 刀 銘 肥前國住武蔵大掾藤原忠廣/寛永六年二月吉日
地鉄は小板目がよく詰んで地沸が厚くつき、小糠肌と呼ばれる特徴的な地鉄をしています。
そしてよく見ると僅かに肌が流れたところがあり、直刃調の刃文で肥前刀独特の帯状の匂口に砂流しや喰違い刃が入るような変化が多く見られます。
この辺が初代忠吉・忠廣の特徴的なところで、近江大掾忠廣とは違う点かと思います。
4号刀 脇指 銘 左行秀/安政六年二月日
刀と揃いで重要刀剣に指定されている左行秀の脇指です。
左行秀は匂が深いところが特徴で、また地鉄が柾に流れ、刃中に砂流しがかかるところも見所です。
姿は大鋒が多く、今作のように脇指であっても同様です。
互の目が連れて砂流しがかかった刃文から清麿一派の入札がありましたが、今作は清麿よりも匂深く、清麿であれば荒沸がつくかと思います。
また井上真改という入札もありました。行秀は真改に私淑したと思われる作品を多く作っていますが、真改にはここまで大鋒となる姿は殆ど見られません。
三ツ棟になっていたり、鎬地を削いだり平肉があまりついていないところからも新々刀と見ていただきたいです。
5号刀 刀 銘 泰龍齋宗寛造之/慶應三年二月日
師である固山宗次に非常に近い出来を示しており、およそ四寸ごとに型で押したように同じ刃文を繰り返し焼いています。
また宗寛の場合は映りが出ると言われますが、今作には殆ど見えないこともあってか今回は宗次という入札がありました。
宗寛の特徴としては三ツ棟が多く、今作も三ツ棟です。この特徴を捉えられると宗寛と見えますが、全体的な刀の出来、刃文の特徴を見ると宗次と入れられるのも良い札なのではないかと思います。